お酒は飲みません。タバコも吸いません。ギャンブルは一度もやったことがない。友人からは「堅実だね」「お金の心配なんてなさそう」と言われます。上司との移動中の車内で、飲み会の席で、「何が楽しくて生きてるの?」と笑われたこともありました。それでも悪い気はしませんでした。その言われ方が、むしろ自分の誇りみたいなものだったからです。
家計簿アプリで支出は把握しています。支払いはほとんどカードに寄せているので、何にいくら使ったかは見れば分かる。それでも私が安心していた根拠は、その記録ではありませんでした。「無駄遣いをしていない」という、その一点だけです。
「浪費していないから大丈夫」が、いちばん危なかった
自作した「人生キャッシュフロー・シミュレーター」がおおよそ形になり、テストのつもりで自分の数字を入れてみたときでした。深刻な気持ちはまるでなかった。浪費していないんだから、悪い結果が出るわけがない。そう思いながら、年齢と手取り、貯金額を打ち込みました。
浪費癖がないというのは、お金が漏れ出す穴がないという意味では、たしかに強みです。ただそれは「今、大きく損をしていない」というだけの話でした。将来にわたってお金が守られている、という話とはまるで別物だった。私はその二つを、ずっと同じものとして扱っていたのです。
グラフは、50歳で底をついた
入力したのは、我が家に近いモデルケースです。年齢33歳、世帯の手取りは月40万円、貯金は300万円。毎月3万円を利回り5%で投資に回しながら、一般的な4人家族というプランで、3歳と1歳の子どもを育てています。
出てきたのは、50歳という数字でした。この年に、資産が底をつく。
理由を追いました。50歳は、下の子が大学に入る年です。このシミュレーターは、大学の1年目に在学費用と入学費用をまとめて計上します。今の金額で、合わせて253万円ほど。しかも17年後には、そこに物価上昇が乗った金額になります。
念のため、子どもの年齢を8歳と6歳に変えて試しました。破綻年齢は45歳。ちょうど5年早い。やはり下の子が大学に入る年でした。
私が飲まなかったお酒も、吸わなかったタバコも、この結果には一円も効いていませんでした。
この253万円がどういう内訳で、子どもが2人いると何がどう重なるのかは、大学の初年度に一度で出ていく金額を計算した記事に書きました。
実際にどう変わるか、シミュレーターで確認する →「使わない」と「守る」は、まったく別の話だった
油断していた理由が、ようやく腑に落ちました。浪費しないことは、毎月じわじわ漏れていくお金を止めることには効きます。けれど、数年に一度まとめて出ていく塊には、一円分も効いていなかった。守っているつもりで、守れていたのは半分だけだったわけです。
試しに、固定費削減のスライダーを月2万円まで動かしてみました。破綻年齢は52歳。たった2年延びただけでした。
月2万円の節約を19年続ければ、単純計算で456万円になります。しかし、2人の子どもの教育費が連続してのしかかり、さらに物価上昇も加わる現実の前では、その456万円ですら「破綻をたった2年先送りする防波堤」にしかならなかったのです。
真面目にやってきたつもりの自分には、これがいちばんショックでした。日々の「使わない」という努力の積み重ねと、人生の節目で「まとめて出ていく塊」とでは、そもそもスケールが違っていたのです。
穴は、いちばん安心していた場所にあった
グラフを見て思ったのは、自分がどこを見ていなかったか、ということでした。毎月の支出はずっと見ていた。見ていなかったのは、17年後に一度だけ来る日のほうです。自分では気づけない穴は、いちばん安心している場所にできる。浪費していないという自負があったぶん、私はここを自力では一生見つけられなかったはずです。
今やろうとしているのは、月々をさらに削ることではありません。17年後に来ると分かった塊に向けて、いつから、いくらずつ準備するかを決めること。堅実さの中身を、「使わないこと」から「備えること」まで広げる。「何が楽しくて生きてるの」と笑われた私に足りなかったのは、我慢ではなく、その一手間でした。
無料でシミュレーションしてみる 入力は1分程度。今すぐグラフで確認できます


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