浪費ゼロでも、51歳で手元の現金が尽きる計算だった。酒もタバコもやらない私が見落としていたもの

マインドセット

お酒は飲みません。タバコも吸いません。ギャンブルは一度もやったことがない。友人からは「堅実だね」「お金の心配なんてなさそう」と言われます。上司との移動中の車内で、飲み会の席で、「何が楽しくて生きてるの?」と笑われたこともありました。それでも悪い気はしませんでした。その言われ方が、むしろ自分の誇りみたいなものだったからです。

家計簿アプリで支出は把握しています。支払いはほとんどカードに寄せているので、何にいくら使ったかは見れば分かる。それでも私が安心していた根拠は、その記録ではありませんでした。「無駄遣いをしていない」という、その一点だけです。

「浪費していないから大丈夫」が、いちばん危なかった

自作した「人生キャッシュフロー・シミュレーター」がおおよそ形になり、テストのつもりで自分の数字を入れてみたときでした。深刻な気持ちはまるでなかった。浪費していないんだから、悪い結果が出るわけがない。そう思いながら、年齢と手取り、貯金額を打ち込みました。

浪費癖がないというのは、お金が漏れ出す穴がないという意味では、たしかに強みです。ただそれは「今、大きく損をしていない」というだけの話でした。将来にわたってお金が守られている、という話とはまるで別物だった。私はその二つを、ずっと同じものとして扱っていたのです。

グラフは、51歳で現金が尽きた

入力したのは、我が家に近いモデルケースです。年齢33歳、世帯の手取りは月40万円、貯金は300万円。毎月3万円を利回り5%で投資に回しながら、一般的な4人家族というプランで、3歳と1歳の子どもを育てています。

出てきたのは、51歳という数字でした。総資産のほうは95歳まで一度もマイナスになりません。底をつくのは、手元の現金のほうです。51歳から先、足りない分は投資を取り崩して埋めることになります。

理由を追いました。下の子が大学に入るのが50歳。その翌年です。このシミュレーターは、大学の1年目に在学費用と入学費用をまとめて計上します。合わせて279.2万円。しかも17年後には、そこに物価上昇が乗った金額になります。

念のため、子どもの年齢を8歳と6歳に変えて試しました。今度は45歳。6年早い。やはり下の子が大学に入る年でした。しかも表示される警告そのものが変わります。現金が尽きるだけでは済まず、総資産のほうが一度マイナスに沈む。子どもが大きいほど、貯める時間が短いぶん、同じ塊がより重く効きます。

私が飲まなかったお酒も、吸わなかったタバコも、この結果には一円も効いていませんでした。

この279.2万円がどういう内訳で、子どもが2人いると何がどう重なるのかは、大学の初年度に一度で出ていく金額を計算した記事に書きました。

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節約は効いていた。ただし、効く場所が違った

試しに、固定費削減のスライダーを月2万円まで動かしてみました。現金が尽きる年は52歳。1年しか延びません。

ここで終わっていたら、私は「節約なんて無駄だった」と書いていたはずです。実際そう思いかけました。ところが、グラフの右端を見て考えが変わりました。

95歳時点に残る総資産が、4,900万円から10,182万円へ。5,282万円増えていました。月2万円を削るだけで、です。

効いていなかったわけではありません。効いていた場所が、私の見ていた場所ではなかった。削った2万円は、毎年ずっと家計に残り続けます。手元の現金が尽きたあとに投資から取り崩す額が少なくて済み、残った分がそのまま複利で増えていく。その差が何十年もかけて積み上がる。ただしそれは、老後に残る額に効くのであって、17年後に来る塊が来る時期そのものを動かす力はありませんでした。

真面目にやってきたつもりの自分には、これがいちばん腑に落ちた部分でした。日々の「使わない」という努力は、たしかに報われている。けれど報われ方が、自分の想像とは別の場所に出ていた。私の家の条件では、時期はほとんど動かせませんでした。動いたのは、その先に残る額のほうです。ただしこれは私の家の話です。条件によっては、月1万円の削減でも足りなくなる年が大きく動く家計があります。

穴は、いちばん安心していた場所にあった

グラフを見て思ったのは、自分がどこを見ていなかったか、ということでした。毎月の支出はずっと見ていた。見ていなかったのは、17年後に一度だけ来る日のほうです。自分では気づけない穴は、いちばん安心している場所にできる。浪費していないという自負があったぶん、私はここを自力では一生見つけられなかったはずです。

今やろうとしているのは、月々をさらに削ることではありません。17年後に来ると分かった塊に向けて、いつから、いくらずつ準備するかを決めること。削ることは続けます。それは老後に効くと分かったからです。そのうえで、時期に効く手を別に用意する。堅実さの中身を、「使わないこと」から「備えること」まで広げる。「何が楽しくて生きてるの」と笑われた私に足りなかったのは、我慢ではなく、その一手間でした。

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※本記事は、シミュレーターの活用イメージをお伝えする体験談です。結果は入力条件によって異なり、将来の家計状況を保証するものではありません。教育費は文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」および日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」にもとづく試算であり、実際の金額は進路によって大きく異なります。シミュレーターは概算の推定値であり、将来を保証するものではありません。

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